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才教ダイアリー

ピンチヒッターができる強さ

投稿日:2014.11.06

 6年生のさいきょう祭の演目は2つありました。これまでも発表してきた合奏に加え、子どもたちにとって初めてとなるミュージカルにも挑戦しました。そのミュージカルは一人一役ですべての子にセリフや個性があり、誰もが主役と呼べる配役でした。それだけに、練習当初は、ほとんどの子が役に入り込み、演じることへの難しさを感じているようで、「自分で考えて動くこと、自然に振る舞うことがこんなに大変だと思わなかった」という声が聞かれました。
 多くの子が練習に悪戦苦闘していたある日、体調不良でお休みをしまった子がいました。普段の練習ならばお休みをした子のセリフは、その場面に出てこない子がセリフを読み上げる形で行っていました。しかし、その日は通し練習です。代役を立てなければ練習になりません。穴を埋めるために誰かに演じてもらう必要がありました。
 
 そこで名乗り上げたのがA君。
 
 A君は普段から自分のことを「人前でしゃべることが苦手」と思っていて、今回のミュージカルに関しても始まる前から、自分にできるのか不安を感じていました。そんなA君が代役を引き受けたことに担任の私は驚きや嬉しさを感じる一方、無事に務められるか、やや不安に思いながら練習を見守りました。
 だんだんと代役の場面が近づくと、A君は無口になり、表情もこわばってきました。
 いよいよその場面です。担任の私は、驚きました。A君は自分の役以上の声の大きさでセリフを言っているのです。セリフだけではありません。立ち位置や動き、言葉のイントネーションまで、お休みした子を上手に真似ていました。まるで本人が演じているように感じました。
 これは自分の役のことだけではなく、他の人がそれぞれの役をどう演じているか、どんなことを先生に指導されているかを、注意深く見聞きしていたからこそできるのです。A君にとって「ミュージカルは6年生全員で作っているのだ」という意識があったのでしょう。
 ミュージカルは1人の頑張りでできるものではなく、誰かが休んでしまった穴はとても大きいです。ただ、それをカバーし合える関係作りが、さいきょう祭の練習を通してできたのではないかと思います。
 
 さいきょう祭が終わり、A君は「日常生活で積極的になったり、大きな声で話したりできるようになった気がします」と自分の成長を振り返っています。これからもそれぞれの子どもがさいきょう祭で学んだことを生かしていってほしいと思います。
 
小学6年3組 岡村大地