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才教ダイアリー

『頂へ』

投稿日:2015.02.27

 「ちはやぶる かみよもきかず たつたがわ からくれないに みずくくるとは」



 



 百人一首を一生懸命、暗記・暗唱する子どもたち。今、5年2組は百人一首、一色に染まっている。



 



 明日(2月28日)、百人一首大会がある。それに向けて、一人ひとりが「一枚でも多く札を取りたい」「誰よりも多く札を取り勝ちたい」と必死だ。



そんな子どもたちの取り組んでいる様子から、柔軟さを実感している。百人一首に触れる機会は、一年に一回程度である。しかも、百人一首は小学生からすると聞き慣れない古文である。札に書かれている文字(古典的仮名遣い)と実際に詠まれる読み方が違っているのにも関わらず、子どもたちは柔軟に対応し、現代仮名遣いで歌を詠んだり、暗記・暗唱したり、札を取ったりしている。ましてや、歌の意味を理解するのも難しい。それでも数多く歌を暗記・暗唱する子どもたち。彼らの柔軟さを実感するのと同時に、記憶力の凄さにも私は感心している。



 



 



 私が百人一首と出会ったのは、実は高校生の時だ。しかも、百人一首には苦い思い出がある。高校一年生で百人一首大会があるということで必死になって暗記したのを覚えている。しかし、当時の私は古文に抵抗を感じており、なかなか覚えられず苦労した。苦労して覚えたのにも関わらず、いざ練習試合を行うと、ほとんど札を取ることができずにいつも惨敗だった。それが悔しくて、たまらず一人で悔し涙を流したこともあった。一枚でも多く取りたい、また人よりも速く取りたいという強い気持ちがあり、必死に頑張って覚えた。ときには百人一首の強い友達と一緒に練習したこともあった。その努力の甲斐あって、大会直前には、誰よりも多く札を取れるまでになっていた。だが、大会当日になってアクシデント。私は体調を崩し、熱を出してしまった。どうしても大会に出たかった私は、無理して登校したものの途中でダウン...。結局は早退し、大会に出ることができなかったのであった。



 



 



 最近はクラス内で練習試合を行っている。中には、多くの札を取ることができないという子がいる。Aさんはその一人である。



「試合になると、焦ってしまう。」



「歌を覚え、分かっているのに、相手よりも速く取れない。」



などとAさんは言っていた。札を取れないもどかしさと悔しさは、当時の自分を見ているようで、私はAさんの思いが手に取るように分かるのだ。



 Aさんの努力はここから始まった。「どうすれば多くの札を取れるか」。そのことを多くの札を取ることができる子に聞いた。もちろんそれだけではなく、決まり字を覚え、何回も練習し、今自分が精一杯できることを地道に努力し続けている。「一歩一歩。」まさに登山者が頂を見据え、山を登るが如く、その歩みはゆっくりだが、着実に頂へと近づいている。



成果が徐々に現れ始めている。Aさんは、練習試合の回数を重ねるごとに獲得した札の枚数も増え、クラス内のランキングも上がってきているのだ。



 



「努力は決して裏切らない」



「努力は必ず成果として現れる」



 



Aさんをはじめ、子どもたちはそれらを信じ、日々努力している。



 



いよいよ明日が百人一首大会である。限られた時間の中で、努力し続けた成果を存分に発揮してもらいたいものだ。2組一人ひとりが頂を目指し、そして百人一首大会で輝くように...。



 



5年2組 担任 酒井大介