投稿日:2017.06.06
色の彩度、明度、全てにおいて鮮やかに放つ姿は、生命の力強さを感じる。
山奥に何千年もの時間の中を生き続け、今も他を圧倒する存在感と荘厳さを示している。
「事前学習や現地調査、体験活動を通して、母国のことを探究するとともに、日本人の誇りと愛国心を育み、真のエリートとなるための礎を築く」
修学旅行の目的を胸に、9年生40人は長崎・鹿児島へと旅立った。
修学旅行最大の試練。それは、縄文杉トレッキングである。全行程約22㎞の道のりを11時間ほどかけて歩く。トレッキングといっても平坦な道ばかりではない。足元も悪い場所や急勾配の道を長時間かけてひたすら歩く。大人である私でさえも、この道のりを歩くのは相当の覚悟と勇気が必要である。生半可な気持ちでは完歩することができない。フィジカルやメンタルの強さが求められる。それでも彼等は自らの力を試すため、そして新たな可能性を見つけるために全員でこの試練に挑んだのだった。
縄文杉トレッキング前日の生徒たちの表情は不安に満ちていた。完歩することができるだろうか。試練を乗り越えることができるだろうか。そんな様々な思いが交錯していたことだろう。私もそんな彼等の表情を目の当たりして、大丈夫だろうかという心配と不安にかられたのであった。しかし、トレッキング当日の朝、私の心配や不安は吹き飛んだ。一人ひとりの表情が引き締まり、目にはやる気が満ち溢れていた。覚悟を決めた瞬間でもあった。
縄文杉トレッキングの目標は個々で設定しているが、全員に共通していること。それは「全員で完歩すること」だ。目標達成に向けて、ひたすら歩く彼等。時にはガイドさんの説明に耳を傾け、屋久島の自然を体感しながら頑張って歩いた。
私が引率したAグループには身体面で不安を抱えているBくんとCさんがいた。トレッキング開始時、緊張をしているBくんやCさんの姿が見られた。そんな彼等の緊張をほぐすために、同じグループのDさんやEくん、そしてFくんがたわいもない話等で場を和ましていた。それにより徐々に二人の緊張もほぐれ、順調に歩を進めることができた。
トレッキングも半分を過ぎた辺りから足元も悪くなり、山道が続く。フィジカルやメンタル的にも厳しくなってくる。そんなときグループ内で「大丈夫。頑張ろう。」などと励ましたり、「歩く順番を変えよう」などと工夫を凝らしたりと互いで支え合い、協力する姿が見られた。
辛くても弱音を吐かず、そして逃げ出さなかった。試練を乗り越えた先に見た縄文杉に誰もが心を奪われた。圧倒的な存在感。自然の凄さや素晴らしさ、悠久の時間がそこには流れているようだった。そんな縄文杉の姿は生徒一人ひとりの心に今でも焼きついていることだろう。
BくんやCさんをはじめ、どのグループも試練を乗り越えることができた。それと同時に全員の共通目標、「全員で完歩すること」を成し遂げることができたのだった。この試練は一人の力では難しいものがあり、限界を感じる。互いの手を取り合い、仲間の支えがあってこそ達成できるのではないかと思う。誰もが仲間への有難さや感謝を抱いたことであろう。
縄文杉トレッキングのほかにも、長崎の三菱重工長崎造船所と原爆資料館、鹿児島の知覧特攻会館や武家屋敷、そして屋久島環境文化村センターやガジュマル公園等を巡り、歴史文化や平和学習、自然環境について学んだ。そして修学旅行中に出会った多くの人々から多くのことを学んだ。
修学旅行で得たもの。
諦めない心
忍耐
コミュニケーション力
積極性
責任感
仲間の大切さと素晴らしさ
自立と自律
思いやり
感謝
自らの弱い心に打ち勝つ力
協力や協調性
多くの知識
まだまだ挙げればきりがない。彼等が挑戦し続けた結果が、多くものを手に入れることができたのだ。得たものは、彼等にとってかけがえのない宝物である。そこでしか得られない宝物を手にした彼等は、大きく逞しく成長を遂げた。
また新たな挑戦が始まる。今度は得た宝物をどう活かすか。それに尽きる。その宝物を今後の生活や学校教育活動等で大いに活かし、更に自己を磨き続けて欲しい。そして真のエリートとなることを、私は切に願っている。
9年1組担任