投稿日:2017.06.23
先日の6月10、11日。
松本市中学校体育大会で、中学校の部活に入っている多くの3年生が引退をしています。
教員同士の話の中でも、全力を出して頑張っていたことが話されていましたが、才教学園野球部も、この大会で9年生7名が引退しました。
昨年の才教ダイアリーでは、合同チームで戦うことを通して、成長した部員たちを取り上げました。
今回は、野球部の「それから」をお伝えします。
***
昨年の12月のこと。
合同チームが解散し、オフシーズンに突入しました。
オフシーズンはどの学校も体作りをメインに行うので、ボールに触る機会が減ります。
加えて、才教学園の野球部は他校に比べて元々の活動日数も少ないので、雪や雨が降らない限り、できるだけボールに触るようにし、日が暮れたら、ひたすら素振り練習というメニューを3月ぐらいまで繰り返しました。
反復練習なので、部員も同じ内容に飽き飽きしている様子でした。それでも、誰一人弱音を吐くことなく、練習に取り組んでいました。
4月になり、新入部員獲得のチャンス。
しかし、野球部の新入部員は6年生1名だけでした。
6年生も含め、9名。
実質、大会に出られるのは、昨年からいる部員8名のみ。
すぐに、全員で今年度の活動について話し合いました。
「合同チームでの出場」か「才教学園として出場」か…
答えは全員一致で「才教学園として出場」でした。
そこで9年生と7年生からそれぞれ1名ずつ助っ人をお願いし、何とか11人を確保。
チームの売りを、バッティングより守備にしようと、重点的に練習を始めました。
そんな中、5月の終わりに大会へ出場。
対戦相手は、堅実に戦ってくるS中学校。
久しぶりの大会で、才教学園の部員も楽しみにしていました。
ところが、いざ試合が始まると、緊張からかなかなか声が出ません。
エースもコントロールが定まらず、結果は散々なものでした。
その後、6月に行われる最後の大会に向け、反省も踏まえて一層練習に励みました。
声を掛け合い、格段に上手になっていく守備。
しかし、上手くなっていくにつれて見えてきた欠点。
それは、「エラーの連鎖」。
エラーをした後の切り替えがなかなかできないのです。
部員たちもそれを自覚し、克服しようと練習に励むうち、チームとしてもより一体感が生まれてきました。
そんなある日、部のエースであるI君が私に声をかけてきました。
「1年間エースとして頑張ってきたが、試合のリズムを作れたことがない。5月の試合も多くのフォアボールを出して久しぶりの試合をダメにしてしまった。悩んだ結果、投手としての出場はあきらめる。」
この一年間、I君の努力が実を結ぶことを願い、私も熱く指導していました。
でも、それが返って重圧だったのかもしれません。
部員全員を集め、I君自身から事情を話してもらうことにしました。
部員たちもそれをしっかり受け止めたようで、話し合いの最後に部長のM君から
「最後の大会だから、全員が納得のいく試合にしよう。」
と、声がかけられました。
その日から、もう一つ上の段階を目指す練習です。守備位置やアドバイスなど自分たちで考えて、声を掛け合うようになりました。
2番手のピッチャー、N君の球威も増し、良い球を投げられるようになりました。
そして迎えた松本市中大会。
1回戦の相手はM中学校。
両校のピッチャーとも、非常に良い立ち上がり。
その力投に応えようと、才教の打線が相手ピッチャーをとらえ始め、三回に2点先制。
良いムードを逃さないため、更に声を出し、こちらの流れに引き込む部員たち。
しかし、試合運びはそのままとはいかず、四回の相手の攻撃。
1アウトから守備のエラーで出塁を許してしまいました。
そこから始まってしまったエラーの連鎖。
一挙に3点を失い、その流れを取り戻せないまま、2対3で試合終了。
やはり、エラーが課題…。
敗戦後も下のトーナメントがあるため、1日で2試合を戦うことになります。
連投の経験がないN君に次の試合も投げられるかを聞くと、
「投げます!」と即答してくれました。
第2試合はA中学校と。
昨年合同チームを組んだ学校です。
複雑な気持ちもありましたが、お互いに中学3年生は最後の試合ということで、全力で臨みました。
この試合でも才教の打線は相手の投球をとらえ、終わってみれば7対3で勝利。
喜びに沸く部員たちに、私も2日目に進出できると一安心しました。
しかし、試合後の整列で、A中学校の選手たちが涙している姿を見て、それまで喜んでいた才教の選手も静まりました。
グラウンド整備も終わり、初日の日程が終了した時、A中学校の生徒がM君に声をかけました。
「頑張ってね。」
負けたチームを思いやる気持ち。負けたチームの分まで戦うんだという気持ちを、初めて経験しました。
大会2日目、相手は当然、格上の中学校ばかり…。
才教生もその雰囲気を感じ取っているようでしたが、精いっぱい戦えるようにと、入念にアップに取り組んでいました。
第1試合は小技が上手なH中学校。
一回、H中の攻撃。
ランナーに守備のリズムを崩され、エラーから1点を取られてしまいました。
しかし、昨日の反省もあり、ピッチャーを盛り立て、後続を抑えることができました。
三回、才教の反撃。
1番バッターがヒットで出塁し、盗塁で3塁へ。
4番がヒットで返し、同点とするも、その後が続かず同点止まり。
以降は投手戦になり、最終回まで同点のまま。
七回裏。H中の攻撃。
延長戦に持ち込めば、才教は1番からの好打順に戻ります。
とりあえず、ここは抑えたい!
…三振で1アウト。
続くH中バッターに、今までなかったデッドボール。
野手も投手に声をかけ続けていました。
私もバッターに集中するよう指示を出し、見守りました。
追い込んだ後の3球目。
カキーン・・・
快音とともにセンターオーバーの打球。
1塁ランナーがホームに生還する時間は、こんなに静かなものかと思うほどでした。
1対2で、ゲームセット。
野球部の大会が、終わりました。
試合後の反省会。
何を話そうか、落ち込んでいるだろうか…そんな思いとは裏腹に、当の本人たちは、すがすがしい顔をしていました。
「全力を出し尽くせた。」
***
野球部で培った経験は、勉強では得られないものばかり。
きっと、引退した9年生のこれからの糧助けになると信じています。
また、9年生が見せた姿は、後輩に伝わり、ずっと引き継がれるのだと思います。
部活は、良いものです。
野球部顧問