10月17日付の生活の記録の日記の一部である。
・緊張して声が出なかった...。
・楽器の演奏と歌声がズレてしまった...。
・笑顔で歌うことができなかった...。
・練習の時の方が上手に歌えていた...。
・振り付けがバラバラだった...
等々、彼らの日記からは悔いの残る言葉が連ねられていた。
10月26日のさいきょう祭に向けて、かれこれ1ヶ月以上練習してきた。今年の5年生は合唱と合奏をミックスした合唱奏。与えられた演目時間は20分間。限られた時間で、歌に込められた思いや一人ひとりの気持ちを聴衆に届けられるよう、必死に練習している。合唱、合奏共に完成度も上がってきている。それは、私も含め5学年職員も、彼らも実感していた。ただし、私は一抹の不安を抱いていた。それは彼らから緊張感がなく、本気になっていないことだ。刻一刻と本番は近づいているのにも関わらず...。
不安は的中する。
10月16日。いよいよさいきょう祭に向けた第一回目のリハーサルが行なわれた。彼らの演目は、まだまだ聴衆に披露できるものではなかった。初めてのリハーサルということで緊張したことであろう。一人ひとりの表情が強ばっていた。声が小さい。楽器の演奏も間違っていた。時折、指揮者を見ていない人がいるため、合唱と合奏がバラバラだった。練習の成果を発揮できずに終わったリハーサルだった。
「納得がいかない。」
「悔しい。」
「これではまずい。」
舞台を去る彼らの姿が、そのようなことを言っているような気がしてならなかった。
「今日の昼休み、13:20から教室で歌の練習をします。」
次の日の給食前の出来事であった。パートリーダーの一人、Aさんが彼らに声をかけた。彼らもAさんに呼応する。やっと本気になった瞬間だ。寸暇を惜しんで自主的に練習する。とても素晴らしいことだ。
Aさんをはじめ彼らは、今置かれている自分たちの状況を把握した。そして、どうすべきなのかを自分たちで判断し、行動に移した。「状況を把握する力」、「判断する力」、「実行する力」。これらこそ社会を生き抜くために必要な力だと私は思う。そんな彼らの姿を見た私は、嬉しくてたまらなかった。それと同時に、本番も大丈夫という確信を抱いたのであった。
さいきょう祭まであと5日。今日も彼らは練習する。
小学5年2組 酒井 大介