1. ホーム
  2. 才教ダイアリー
  3. 2021年度
  4. 国語の授業より④ ~中学校3年生・後編~

才教ダイアリー

国語の授業より④ ~中学校3年生・後編~

投稿日:2021.09.27

国語科担当・6学年担当



「故郷」の批評 その3


 この作品は『希望』とは何かということを問い掛けている。希望を持つことが難しくなった社会の中で、主人公は多くの絶望に直面しながらも、最後には希望についての答えを導き出し始める。


 この作品では、その過程においての情景や主人公の心情が細かく描かれている。そうすることで主人公の胸中の虚しさや時代に対する絶望、そして微かな希望も上手く表現されている。主に描かれているのは、私とルントウの過去と現在の関係性についてだ。大人になったルントウに対して、主人公は何を望んでいたのか。子どもの頃のような無邪気なルントウに会いたかったのだろうか。結果として主人公は、昔とは似ても似つかない『でくのぼう』のようなルントウと再会し、大きなショックを受ける。まるでルントウの変わりぶりを批判しているようにも読めた。確かにルントウは変わった。しかし、主人公も同じように変わってしまったのではないだろうか。辛い時代の中で変わった多くの人達と同じように。


 作中(とかつての現実の中国)で、辛い生活や貧困を強いられてきた人々は、疲れ切り、少なくとも昔よりも悪い感じに変わってしまったように見える。私は、そのような描写に絶望しながらも、どうしたら昔のままで居られたのだろうかと考えた。他人のものを奪わずに互いに助け合っていたら、もっと気持ちに余裕を持てていたら、正解は分からないけれど、何か他の道があったのかもしれない。そして、それは主人公も同じだったと思う。


 最後に主人公は、次の世代に主人公たちとは違う未来が来ることに希望を抱いた。この希望は叶いにくい。しかし、主人公は、希望は道のようなものだと言っている。『叶うように行動すべきこと』が筆者にとっての希望なのではないだろうか。


 この作品の主題である「希望とは何か」という問いは、現在の社会でも必要だと思う。ただでさえ暗いニュースが飛び交う日々に、近年には新型コロナウィルスが加わり、希望を失いかけている人も多い筈だ。しかし、『希望はあるものともないものとも言えない。それは地上の道のようなものである。歩く人が多ければ、それが道となるのだ。』筆者が言うように、ただ待つだけではなく、自ら希望を探し、見つけていくことも大切なのかもしれない。



*******



 いかがだったでしょうか。


 現代で生きる我々(大人)が読んでも、はっと胸を突かれるような文章を、魯迅の作品を読んだ若者が書いています。国と民衆の幸福を目指して戦い続けた魯迅のように希望を追い求め、そして魯迅の願ったような未来を過ごせる社会の中で若者が成長していけることを、今後も切に願っています。



『やまなし』『故郷』は、青空文庫などでも無料で手軽に読むことができます。


ぜひ読んでみて、子ども達の意見と自分の考えを較べてみてください。



①小学校6年生・前編


②小学校6年生・後編


③中学校3年生・前編


④中学校3年生・後編