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才教ダイアリー

本物を知る喜び

投稿日:2025.10.24

 私は、「本物にふれる体験こそが、学びを本物にする」のだと常日頃から考えています。
 教育現場では、効率やテスト結果が重視される場面が増えていて、もちろんそれは大切な要素に違いないのですが、「心が動く瞬間」こそが、学びの原点ではないでしょうか。
 実物にふれる活動には、安全に配慮した準備と勇気が必要です。けれどもその一歩が、生徒の中に長く残る記憶をつくります。教科書の外に広がる"本物の世界"に触れたとき、子どもたちは初めて「知ることの喜び」を実感するのです。

 さて、理科の授業で「動物の体のつくりとはたらき」を学ぶときは、どうしても専門用語や図での説明が中心になりがちです。
 そこで、単元のまとめの時間に、豚の心臓と肺を教材として用意しました。
 机の上に並んだ臓器を前に、生徒たちは最初こそ静まり返っていましたが、「うわ、思ったより大きい!」「これが本当に心臓なんだ...」と、次第に興味の目が輝き始めました。
 つぶれている肺に空気を送り込むと、ふわっと膨らみます。その瞬間、あちこちから「すごい!」「生きてたんだね」と声が上がります。ニトリル手袋をつけた手で心臓の弾力を指で押して確かめる生徒もいれば、食道と気管のつくりの違いを慎重に触りながら確かめる生徒もいます。図では分からなかった感触の違いが、手の中でリアルに伝わってくるのです。
3肺の膨らみfix.jpg 2大動脈fix.jpg

 さらに、ニワトリの手羽先を使って筋肉と関節の動きを調べたり、鶏頭で目や脳の構造を観察したりもしました。生徒たちは、丁寧に目を解剖し、水晶体を取り出して光にかざしたり、網膜を広げて構造を確かめたり。その姿はまるで小さな研究者のようでした。

1鶏頭解剖fix.jpg
 驚いたのは、生徒たちの前向きな姿勢です。苦手そうな表情を見せても、「気持ち悪い」と言って逃げ出す子は一人もなく、みんなが真剣に、楽しそうに、夢中になっていました。この姿は、まさに、文部科学省が掲げる「主体的な学び」そのものだと感じました。

 机の上の知識が、実物にふれることで命を持ち、生徒たちの中で"発見"や"感動"に変わっていく。
 理科という教科は、「命のしくみ」や「自然の不思議」を通して、世界を理解するための入り口を生徒に開くものです。その入り口に立つとき、本物の手触りと感動があるかどうかで、学びの深さは大きく変わるのだと、改めて実感しました。

 こうした授業を通して、「命ってすごい」「体ってよくできている」と感じたその驚きが、やがて未来を支える科学への興味や、他者への思いやりにつながっていくと考えています。


理科担当


※掲載画像は、一部を加工しています