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才教ダイアリー

「越」

投稿日:2016.07.01

 赤組応援隊形の最前線で勇ましく立つ姿。凛とした表情。指の先まで神経が行き届いた手や機敏な腕の動き。そして、遠くまで響き渡る張りのある声。それら全てから自信に満ちあふれていた。


 


 5月29日(日)、第12回体育祭が行われた。外は夏の気配を感じさせる強い日差しが照りつける中、晴天に恵まれ、生徒、児童一人ひとりの活躍を後押しするような素晴らしい天気であった。今年も勝負に徹底的にこだわった、手に汗握る、白熱した戦いが繰り広げられたのであった。


 


 「応援合戦で、白組に勝つためにはどうすればいいか。」


 赤組応援団長Aさんの根底には「絶対に勝ちたい。」という強い気持ちがあり、それゆえAさんは苦悩していた。時には不安を口にしたこともあった。プレッシャーに押し潰されそうになっても、それでも自らを奮い立たせ、応援団長としての役割と責任を最後まで果たしたのだった。


 


Aさんの感心したところ。それは、困難にぶち当たったときである。その困難をAさんは一気に乗り越えようとするのではなく、一つひとつ切り崩しながら乗り越えたことである。そんなAさんの行動を見て、私の脳裏には、井上ひさしさんの『握手』に登場するルロイ修道士の教え、『困難は分割せよ。』という言葉が浮かんだ。


 『あせってはなりません。問題を細かく割って、一つ一つ地道に片づけていくのです。』


〈井上ひさし『握手』より抜粋〉


 


Aさん一人の力ではどうすることもできないこともあった。そんな時、多くの仲間がAさんに手を差し伸べたのであった。赤組副応援団長Bくん、赤組キャプテンCくん、赤組副キャプテンDくん、そして赤組応援団の面々...。『三人寄れば文殊の知恵』。まさにこの諺の如く、彼らはAさんと共に応援の構成や振り付け、隊形等、知恵を絞ったり、出し合ったり、更には実際に動いてみたり...。Aさんを筆頭に多くの人たちの力により、赤組の応援は作り上げられたのだった。


 


 「これで!赤組の応援を終わる!」


 


Aさんをはじめ、BくんやCくん、Dくん、そして応援団、更には赤組の児童生徒全員が全力を出し切った。声を振り絞り、最高の応援パフォーマンスを見せてくれた。応援の最後に赤組全員で言った「オスッ!」には、全員の赤組勝利をやまない熱い気持ちが込められたのと同時に、Aさんの応援にかけた思いの現れでもあった。


 


一致団結して成し遂げた時の充実感や達成感は計り知れないものである。それらは全力で取り組んだ人や集団のみが、しかもその時にしか得られないものでもある。そんな充実感や達成感を得た瞬間に立ち会えたことに喜びを感じると同時に、それらを彼らと共に分かち合えたことに私は感謝している。


 知識は伝承できても、感動は伝承できない。


 


12回体育祭 赤組応援団担当