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才教ダイアリー

スピーチで大切なことは

投稿日:2019.09.10


 才教学園では真のエリートを育てる志教育の一環として、授業や行事、あらゆる場面で「表現力」の育成を重視しており、その内の具体的な取り組みとして、9年生ではよく「一分間スピーチ」を行っています。与えられたテーマに沿って、原稿なしで学年やクラスの前で発表します。時間があるときには全員行いますが、挙手制で行うことが多いです。


 


7月、9年生は5月に行ってきたオーストラリア修学旅行の報告会を行いました。その中の催しとして、「修学旅行で学んだ事」というテーマで代表者数人に一分間スピーチをしてもらうことにしました。


人前で発表することに関してはどうしても得意不得意はありますし、普段の学年やクラスと異なり、多くの生徒、保護者の前ということでプレッシャーもさらに大きくなります。予想通り、普段の一分間スピーチでも立候補する生徒が多く手を挙げました。


しかしながら今回その中で一人、普段から控えめで、私の記憶ではこれまで自ら手を挙げてスピーチをすることがなかったAさんの手が真っ先に挙がったのです。彼女は代表に選ばれ、大勢の生徒と保護者の前で次のようなスピーチをしました。


 


「私が修学旅行で学んだ事は性の多様性と家族の在り方です。私のホームステイ先のホストマザーは同性愛者で、家族にはお父さんがおらず、お母さんが二人いました。子どもは国際養子縁組という制度で中国から引き取られた子どもでした。私は今回のホームステイは行きたくありませんでした。本当に正直な話、同性愛を気持ち悪いと思っていたからです。しかし実際に会ってみると、とても明るく、温かく、笑顔が絶えない素敵な家族で、自分の偏見が間違っていたことに気づきました。オーストラリアでは性の多様性について学校の授業でも深く取り扱うことがありますが、日本ではそのようなことが少なく、ホームステイに行く前の私のように偏見を持っている人がいっぱいいると思います。同性婚も認められない日本の社会は、性の多様性においてオーストラリアに比べて遅れていると思います。オーストラリアは、性別も国籍も関係ない、一人ひとりが自分らしく生きられる国だということを学びました。」


 


このスピーチを聞いて、Aさんがなぜ立候補したかがわかりました。一分間スピーチのために内容を考えたのではなく、みんなにどうしても伝えたいことがあったから立候補したのです。いつも控えめで人前にでることが得意なほうではない彼女のスピーチは、緊張していて、早口で、つっかかったり、止まってしまったりと、技術としては未熟だったかもしれません。しかし、彼女の言葉の一つひとつが聞いている人の心にダイレクトに響いて、私を含め多くの人が心揺さぶられ、会場は大きな感動に包まれました。


スピーチには、大きな声、目線、間の取り方、抑揚など様々なテクニックがありますが、最も大切なものは、「自分は何を伝えたいか」です。これをしっかり持っていることが何よりも重要であるということを感じると共に、Aさんの大きな成長をうれしく思いました。


 


 91組担任